陸上モノの情景(ディオラマ)製作のレイアウトに配置したいのだけど、手頃な価格でリアルな市販品は無く、自主製作するは面倒なプロセスで、しかも望み通りのイメージになるのか、不安で躊躇ってしまう樹木のミニチュアを、敢えて作ってみました。
1/35スケール相当のミニチュア樹木を自作する目的は、モノクロ画像でも木の葉を一枚づつ識別できて、枝振りと葉の形や大きさから木の種類をイメージ出来るモノで、しかも、葉数の多少と色付きから季節感も表現したいとの思惑からです。
そして、得た製作経験と自信で、新たなディオラマの表現を豊かにしたい為です。
(自分の内なる可能性の領域開発みたいな)
主材料は廃品の電線コードとティッシュペーパーだけです。
接着は、木工ボンドと瞬間接着剤を使用しています。
作例の樹木は、中高木のヨーロッパカエデ系と高木のケヤキ、それと、車輌のカモフラージュ用に伐採した想定のヨーロッパカエデ系とクスノキの枝です。
最初に枝と幹になる銅線を、廃材の電線コードやリード線から抜き出します。
細い電線でも皮膜を引き除いて銅線を剥き出しするワイヤーストリッパーが有れば、作業は速くて楽に出来ますし、銅線の断線を防ぐ確立も高いです。
ヨーロッパカエデは、主枝から二又に五回は分かれて葉枝に至ります。
葉枝は銅線1本で先端に葉を付けますから、五回の枝分かれだと銅線が32本必要で、それを半分ずつの本数で枝分かれさせながら紙縒って行きます。
枝らしい形にするポイントは、枝分かれの位置、枝が分かれる上下左右の角度、曲がりや撓り具合です。
葉枝にする銅線の太さは0.1mmが、それらしくなります。
0.1mm以下の太さだと、柔らか過ぎて位置が安定しませんし、強度も足りないので捩ったり、切れたりし易いです。
太くなると葉と葉枝の大きさが、全然マッチしません。
樹木としてのヨーロッパカエデの幹は主枝を2~4本を合わせた太さぐらいが、樹高に変化を持たせながら枝振りを広げる事ができます。
全ての枝を紙縒り終えて、枝振りの形も整え済ませたなら、銅線の解れ防止と捻りを目立たなくする為に枝全体に木工ボンドを塗ります。
木工ボンドが乾いたなら、サーフェイススプレーを噴き付けて、着色し易くなるようにします。
着色の下地処理には、ホワイトか、グレーのサーフェイススプレーを噴きます。
葉枝と主枝と幹は、実際の樹木同様に色を違わせて塗ります。
着色は、葉の色もそうですが、幹や枝の色を敢えて明るい色にします。
屋外の樹木は離れて縮小した感じで見ると、葉も、枝も、幹も、濃い色に見えます。
その見た目通りの色で塗ると、作品全体が暗い感じになってしまいます。
なので、間近で見る樹木の陽に照らされる部分の明るい色を塗らなくては、自分自身が縮小した作品に入り込んだ目線の色にはなりません。
なので、プラモの塗装は、組み立て説明書やプラモ雑誌の指定色と同じ発色にはしません。
いずれも太陽の光に照らされた発色に調合し直します。
こうすると、指定色が照らされるよりも更に明るく発色して、色は閉じたり、篭ったりせずに、縮小サイズの作品が明るく主張してくれます。
色付けは、プラカラー(作例はエナメル系を使用)を用いています。
塗装の仕上げは、接着の定着と保護膜を兼ねて、艶消し透明サーフェイスをスプレーして落ち着かせています。
高木に成長するケヤキとクスノキは、幹から枝が2~4本に分かれた後、必ず2本に分かれる様は同じですが、上方に広がる枝の角度、枝の横方向への広がり、枝の曲がり、葉の群れ具合が異なり、視覚ではっきりと見分けができます。
また表皮の模様も全く違います。
作例のケヤキは、幹や根の表面処理が滑らか過ぎなので、実際のケヤキ表皮のようなザラ付きに修正するつもりです。
作例では、太さ0.2mmの銅線を紙縒った幹と主枝に、0.1mmの銅線で作った枝を捻り込んで繋いでいます。
葉の製作は、最初に1枚のティッシュペーパーを折り畳んでから、ズレないようにクリップで挟んで固定します。
そして、MO盤やCD盤などの硬いプラスチック板を俎板にして、彫刻刃で葉の形を切り抜きます。
葉の大きさは、縮小スケールに合わせたサイズの形を適当に、それらしくしています。
ヨーロッパカエデの葉はカナディアンカエデの葉の形を模して、それをスケールダウンした大きさでV形刃と平刃で形に刺し切り抜きます。
切り抜いた葉は重ねた枚数がくっ付いていますが、指で摘まんで軽く揉み砕くとバラケます。
切り抜き不良は繋がってバラケないので、切り抜きは、切り繋ぎモレが無いようにしなければなりません。
普通の木の葉は丸刃で形に切り抜き、刃の切り繋ぎの重ね調整で、木の葉の大きさを変えます。
丸刃のRの大きさやV刃の開き角度が、いろいろと有れば、葉の形や大きさがバラエティーになります。
切り抜いた葉は纏めて、シンナーで薄めた塗料に浸して着色します。
薄め過ぎると白っぽくなったり、染まりきらない葉が有ったりしますし、濃過ぎると、乾燥で葉が塊りでくっ付いて剥がせなくなりますから、シンナーの量と薄め加減は慎重にします。
染色した葉は、乾いてから出来るだけ1枚ずつに剥がします。
染色と剥がしが面倒ならば、ティッシュペーパーではなくて、緑色系の花紙を使います。
花紙は、誕生会などのイベントで飾り付けのフサッとしたペーパーフラワーを作る極薄の色紙です。
この緑色系の花紙を折り畳んで、同様に丸刃の彫刻刀で木の葉の形に切り抜きます。
ティッシュペーパーを用いるよりも、くっ付きが弱くてバラバラにし易いです。
染色した葉が乾いて、出来るだけ1枚づつに剥がしたら、ヨーロッパカエデの葉枝の先端に、チョンと木工ボンドを楊枝で着けて、葉1枚をピンセットで摘まんで置くように接着して行きます。
葉を着けた後は、横から葉枝と葉を一緒にピンセットで摘まんで接着を補完します。
葉枝を1本ずつ行うチマチマと苛付くウジウジとした作業ですが、着ける箇所は有限ですし、いつかは終了します。
完成後を想像しながら、自分を見詰め直す時間として頑張ります。
一気にしようとはせずに、暇な時に思い出したように行うのが完了への早道です。
ケヤキやクスノキの木の葉の接着は、モシャッと重ね合わさるようにした葉枝に、濃い目に薄めた木工ボンドを筆で塗り付けてから、木の葉をバサバサっと素早く振り掛けた後、葉枝の間に楊枝で木の葉を押し込みます。
それから、逆さまにして接着しない木の葉を振り落とします。
作例のケヤキは葉枝が多いので、部分的に分けて木の葉を着けて行っています。
全体を着け終わると、葉が着いていなかったり、葉着きが少なかったりする葉枝を捜して、葉の付きを補完します。
花紙を切り抜いて作った木の葉は、樹木の葉として明るい緑色や薄い緑色ですから、新緑の設定以外や幹枝や情景の色合いイメージにミスマッチかも知れません。
なので、枝に接着した後は少し溶剤で薄めたイメージカラーの塗料で着色して、自分の情景にマッチする色合いにして行きます。
作例のヨーロッパカエデとケヤキは、中部ヨーロッパの五月初旬の葉付き状態と色目を想定していますが、ヨーロッパカエデは葉枝が少なくて葉付きが足りないので、葉枝を増やして葉の植え着き修正を行っている最中です。
五月初めの葉の茂り状態(カエデ科)です。
八月中旬の葉の茂り状態(カエデ科)です。
左からケヤキの五月初旬、七月下旬、九月中旬の葉の茂り状態です。
太い中央葉脈から折り目が付いた様に見える葉は、冬でも落葉しない照葉樹に多い堅くて厚い、そして、表面が光沢で裏面に艶が無い、椿、金木犀、椎、榊、ドングリなどの木の葉です。
それらの木の葉は中央に軽く折り目や筋を付けて、枝振りや葉の茂り、幹と枝と葉の色調で固有表現をすれば、より精緻な感じになるでしょう。
でも、樟の様に少し薄めで軟らかい葉には、折り目を付けない方が、それらしくなると感じています。
根元周りの地面のベースは、軽量紙粘土を薄い板状にしたモノで、指で伸ばしただけの不均一な厚みと乾燥での反りやウネリが、それっぽい自然さにしてくれています。
ベース色は筆塗りで、鑢で乾燥させた紙粘土を削って作った屑粉を塗料に混ぜて塗り付け、黄色っぽい砂地の細かいザラツキを表現しています。
その上に水で薄めた木工ボンドを塗り、胡桃内の仕切り膜の微細片や茹で落花生の殻を潰して粉状にしたモノをマブシ掛け、更に枯れた観葉植物の微細な木片や落ち葉を置いて接着します。
そして、仕上げは定着を兼ねて、艶消し透明サーフェイスをスプレーしてベースと樹木全体を保護します。
尚、ベースの裏には磨耗を防ぐのと設置面の平面を保つ為に、0.5mm厚のプラ板を木工ボンドで貼り付けています。
林や道路の際、それに庭先に植わるヨーロッパカエデのベースには、微細片にした茶色の胡桃内の仕切り膜と枯葉を疎らに配して陽当たりの良さそうな感じにします。
日光が遮られる林の中のケヤキ下は、日陰で乾燥した枯葉溜り具合を多目の落花生の殻粉で模してから、新緑の落ち葉も疎らに配します。
草の茂りは、鉄道模型のレイアウトに使う草原マット(若草)を小さく千切って貼り付けています。
ミニチュア樹木の製作は面倒で繊細な作業が多くて、モチベーションを失い勝ちになりますが、完成へ至るは作品のイメージ作りが大切です。
例えば、
葉枝を戦がす心地よい風を感じて、風音や葉擦れを聞きたいな。
茂る葉群れからの木漏れ陽は、眩しくて暖かいだろうな。
五月の草木と土の臭いを嗅いでみたいし、鮮やかな色も見たいな。
葉陰での飲食しながらの語らいや読書は気持ち良いよな。
草の上や根元に寝て見上げる息吹く枝と新緑の葉は綺麗だろうな?
葉や枝から虫が落ちて来ないかな?
樹液で幹がベタついていないかな?
落ち葉溜りの中や枯れ枝の下は温かいから、虫だらけだろうな?
何処まで登れるかな?
枝は折れ易いかな?
どのカモフラージュ柄がマッチするかな?
草地や枯葉溜まりを踏んだり、銃を置いたりすると、凹ませて重みを表現しないといけないな?
自分は此処で戦って、死に場所にできるだろうか?
などなど、
イマジネーションしながら作り続けられるのなら、必ず自分のイメージに近い、納得出来る作品が出来上がると信じています。
それに、納得出来ていなくても、出来るまで何度でも、修正して作り直せば良いだけの事です。